2011年02月24日

ありふれた駆け落ち2・大田区・愛人調査

PICT0211_convert_20110223130953.jpgありふれた駆け落ち

 取材したことで、こちらが板長に目星をつけたと食堂責任者に気付かれても致し方ない。 日にちを空けると予想外の行動を起こされることがあるので、警戒されることを承知の上で本日張り込みを開始する。 

 食堂の営業は朝食とランチタイムだけなので、余裕を持って13時から通用門と正面出入り口にて張り込む。

 警戒している場合と無警戒とでは、尾行の仕方は違う。かといって無警戒の相手に警戒している相手のような尾行をしてもうまくいかない。
 素人でも気を抜かなければ無警戒の相手には上手くいくが、警戒している相手には、尾行開始から10秒程でで気付かれるか、尾行の継続はできなくなる。 

 勤務先の社員食堂からこのボロアパートまで板長は歩いてまっすぐ帰宅した。 警戒の様子は微塵もなく、普通の人がそうであるように20分の道のりをただの一度も振り返ることはなくアパートに入った。

 5分も立たないうちに、みどりが財布と買物袋を提げてアパートから出てくる。 近所に買い物に行く素振りなので、追尾は一人に任せアパートの張り込みも継続する。 

 このアパートが二人の仮の住まいかどうかは分からないが早速、依頼者に報告だ。 

 この時が探偵の仕事の集大成であり疲れも何処かへ吹っ飛ぶ。 

 みどりがスーパーで食料品とビール半ダースを買って、アパートに戻る。
 約1時間後、依頼者が息子とみどりの小父と名乗る年配者と一緒に現れる。小父は頑固そうな堅物で鼻息も荒く会えば飛び掛りそうな雰囲気を出している。

 初対面なのでこちらから声をかけ、危険物を持っていないか型通りの身体検査を施す。 気を沈める為に、今後のことなどを聴きながら5分ほど経過する。 

 小父が一番興奮して、依頼者はボーっとしている。息子の悲しそうな表情が印象的で声をかけても反応が薄い。

 これからが探偵の最後の仕上げで、みどりにアパートの部屋のドアを開けさせ依頼者と会わせることが残っている。 依頼者3人を引き連れ部屋の前に立たせる。探偵がノックをして「下の部屋の○○ですが」と言っただけで、みどりが無警戒に明るい声で「は〜い」とドアを開ける。

 目の前に立っていたのは、息子と夫、それに堅物の小父である。
 何度も経験した光景であるが、このときのみどりは、口は開いているが声は出ず、目はまんまるく見開き少し茶色に染めたショートヘヤーの髪が、間違いなく逆立ったのを探偵は見た。 色白のみどりの顔が少しピンク色に染まっていたのは酒のせいだけだったのだろうか。

 この場で探偵は用無しである。後は大人同士の話し合いが朝まで続くだろう。 調査が終わった後はいつもそうであるが、何処か頭の芯が興奮して、なかなか寝付けない。 相棒と酒を飲んでまた反省会だ。乾杯。


 後日紹介者から、みどりは板長と別れ家族の元に戻ったと報告を受ける。 みどりは家に戻ると決心した以上、二度とこのような事を起こすことはないだろう。 家族も受け入れたのだからきっとうまくやって行く気持ちがあるのだろう。 

 探偵としては、この家族が人一倍幸せとまでは成らなくとも充分役に立てたと自負している。
乾杯。 

         mirai@partner-8107.net パートナー探偵社  宇佐美 健 

 
posted by 探偵サロン at 13:08| Comment(0) | 探偵サロン